2014年度日本海水学会西日本支部秋季講演会(長崎大学)

膜技術による海水の有効利用―基礎から応用へ―

日時2014年10月31日(金)14:00~17:40
会場長崎大学 サイエンス&テクノラボ棟 セミナー室1
主催日本海水学会西日本支部
共催公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団、電気透析および膜技術研究会

プログラム

14:00-14:05開会の挨拶比嘉 充(日本海水学会西日本支部長、山口大学大学院教授)
14:05-14:55浸透圧発電の現状と今後谷岡 明彦(東京工業大学名誉教授)
14:55-15:45正浸透膜モジュールの流れ解析林 秀千人(長崎大学教授)
15:45-16:00休憩
16:00-16:50両性荷電膜の現状と課題清野 竜太郎(信州大学准教授)
16:50-17:40長崎県の海洋再生可能エネルギー産業の拠点形成に向けた取り組み森田 孝明(長崎県産業労働部海洋産業創造室長)
18:10-懇親会

講演会・懇親会の様子

西日本支部長(比嘉先生)の挨拶
谷岡先生のご講演
林先生のご講演
清野先生のご講演
森田様のご講演
懇親会の様子

感想文「講演会に参加して」田中 良平(山口大学大学院 理工学研究科)

この度、平成26年10月31日、長崎大学文教キャンパスにて「2014年度日本海水学会西日本支部秋季講演会」に参加させていただきました。貴重なご講演を聞き、今回こちらに秋季講演会を受けての感想を書かせていただきます。

一番目のご講演、谷岡先生の「浸透圧発電の現状と今後」につきましては、正浸透膜(FO膜)を用いた濃度差発電(PRO発電)のメリット・デメリット、PRO発電が今後普及していくための課題点、そして現在稼働している数少ないPRO発電の実績を聞くことができPRO発電の現状を知ることができました。中でも印象に残ったのは、現在PRO発電では塩分高濃度側に普通の海水ではなく、海水淡水化施設から排出される濃縮水を利用している事です。始めは高濃度の塩分が含まれる濃縮水を使うことでより低濃度側からの淡水の浸透を促し、かつ濃縮水の有効活用につながるためと思いましたが、谷岡先生のお話から現在PRO発電で使用されているFO膜では、そのまま汲み上げた海水と河川水の場合良い成果が得られなかったとありました。そのため現在限られた地域で行われているPRO発電が今後普及していくためにはFO膜の膜性能を上げる必要が重要であると理解できました。

二番目に、林先生の「正浸透膜モジュールの流れ解析」のご講演につきましては、シミュレーションを用いた中空糸膜モジュールの流体力学的観点からの解析ということでお話を聞かせていただきました。普段の研究でスパイラル型モジュールを取り扱っていますが、中空糸膜モジュールについてあまり知見が少なく、中空糸の利点や特徴など中空糸の初歩的な部分を知ることができて非常に有意義なご講演でした。

三番目の清野先生のご講演「両性荷電膜の現状と課題」につきましては、陽イオンと陰イオン両者が通過できる領域を有する両性荷電膜の近年の研究成果のご紹介を中心に、両性荷電膜の分類やその製作過程、また今後普及していく上での課題点などを含めた両性荷電膜の現状を聞くことができました。またその中でも清野先生が研究なされている中空糸状の両性荷電膜の製作過程のお話が特に印象に残りました。陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を粉砕し、膜母体となるポリスルホンに混入することで中空糸状の両性荷電膜を製作する方法は興味深く聞かせていただきました。また、膜全体に二つの領域が混在するため移動してきたイオンが膜内でどのような挙動を見せるのか大変興味を抱きました。

四番目の森田様のご講演「長崎県の海洋再生可能エネルギー産業の拠点形成に向けた取り組み」につきましては、長崎県の海洋エネルギー産業における取り組みや対策を幅広く取り上げ、学術分野とは違う視点からのお話を聞かせていただきました。私も長崎出身者として自分の県がどのような環境対策を行っているのか大変興味がありました。特に前日に三菱重工長崎研究所で見学させていただいた浮体式洋上風力発電が五島市で行われていると知りました。長崎県北部は島が多く海が穏やかな海域が多く存在しているためと思われますが、実際に身近なところで最新のエネルギー対策が行われていることに感動いたしました。機会があれば実際に五島市の方へ足を運んでみたいと思います。